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「夜の間に間に喘ぐ夢」
ブログではご無沙汰しておりますorz

先日、外付けHDDの中に突っ込んでるデータをあれこれ整頓していたら、小話を発掘いたしまして。
ファイル作成日が2003/3/3なので、11年前に書いたものです。いま日付見て私も「ファ!?」と目を剥きました。。。
自作公式サイトを置いていたころに書いた散文だとはわかるんですが、サイトには載せたような載せなかったような…???

……ということをツイッターのほうで呟いていたら、ご興味を持って下さる方々がいらしたのでアップさせていただく運びに。

「夢の痕」と、姫神さま「様々果恋草子」収録の「夢彩あかく」のあいだの頃のお話です。
出てくるひとは、例のふたりです。ふたりのせかいです。
そこはかとなく15禁な表現を含みますので、苦手な方はスルーでよろしくお願いいたします!


では、どうぞ ↓


 


  夜の夢の間に間に喘ぐ夢 




 水辺で迎えた「蝶」は眠っている。
 ぐっすりと眠っている。
 とても目を覚ましそうにない。
 その傍らで、男はジッとしている。

 胡座をかいて座り、白い寝床に眠る「蝶」を見下ろしている。

 「蝶」を見下ろすより他に、
 何もしようとしない。





 だけど時間は過ぎる。

 世間(よのなか)は廻めぐる。





 闇の中で目を覚ました。
 そこは自分以外に誰もいない。
 なめらかな感触の夜着と枕と褥のほか、何も見当たらない。
 いや。
 もしかすると目が見えていないのかもしれない。
 指先で触れられるものしか、わからない。



 ここは何処なのだろう。


 私は、
 「誰」を選んだのだったか。



 静かな闇の冷たさが肌にしみてくる。
 とても心地よいけれど、それ以外、何も与えない。
 だけど拒みもしない。
 この闇は優しい。


   眠ろう。

   もう少し眠ろう。



     なめらかな褥へ身を横たえる。

      瞼を閉じるとすぐに世界が終わった。






 世と「蝶」を隔てる戸を開け放ち、男は現れた。

 だけどやはり眠ったままだ。
 だけど黒髪の乱れに、目を覚ました痕跡を見る。

 たゆたうままの艶やかな髪を、指に絡めてみる。
 絹糸のように細く、しなやかな感触。
 青白いほどの肌に、そっと指を這わす。
 そうして腕や首元に癒えかけの傷を見つけた。



 傷痕を数えることはしない。

 ただ

 えも言われぬ情欲が湧いてきて、その肌へ唇を落とした。



 それらの傷は「蝶」が自ら刻んだものだとわかった。
 どうしてか、わかってしまった。
 どうしてか、嬉しかった。
 その傷に気づいた自分と、自らを傷つけた「蝶」に。
 これほどの傷を刻むほどの激情が「蝶」にもあったのだと思うと、嬉しくて仕方ない。



    かつて、
    共にいたときの「蝶」は、心など要らない、と
    そう叫んだほどであったから。




  男は、
  美しい肌に刻まれた傷ごと、すべて、いとおしく想った。




 不可思議な浮遊感に襲われる。
 何かがあちこちでうごめいている。
 あたたかく、やわらかく、あつく、するどい、「何か」に、意識を揺り起こされる。
 触れているのは、なに。
 否。

 ……だ・れ、と。
 かすれたその声に応えるのはやはり、肌へ触れてくるものだけ。

  果たしていま、この身は何を纏っているのか。ここは褥の上なのか。それさえも今はわからない。感覚はただ闇。闇のままに触れてくるものだけ。


   なんて優しい感触。


  触れられる度に自分はとろりとろりと溶かされて、いつしか、闇の一部となりそう。


    この闇に溶けてしまえるのなら、

      嬉しい、

        と

        思った。







 次に目覚めたとき、褥へは簾越しに昼の光が差していた。
 外ではジリジリと蝉が鳴いている。

 首筋に触れると、じっとりと汗ばんでいた。
 触れてみて、初めて、今がまだ夏であることを知る。
 いや、夏であったことを思い出した。

 蝉が鳴いている。
 あれは確か、夏の終わりに鳴く蝉だ。

 でも、それを教えてくれたのはいったい誰だっただろう?

 思い出せない。

 まだ、何もわからない。



 体が熱い。
 半蔀がひとつだけあげられ、簾がさがった部屋に晩夏の気だるさが濃く漂っている所為だろうか。

 部屋には誰もいない。
 少しだけ簾寄りに敷かれた褥に横たわり、単衣を纏い、夜着を胸のあたりまでに打ち掛けた自分がいるだけ。





   蝉が鳴いている。

   他には、何にも聞こえない。


       夢かしらと呟いて目を閉じた。







 夜風で冷やされぬようにと、半蔀はすべて下ろされた部屋のその中。
 男が訪れたとき、「蝶」はやはり眠っていた。
 黒髪のたゆたい、夜着の乱れから、彼女が起きた痕跡は見てとれる。
 だけど男が枕元に腰を下ろしても、ぴくりとも動かない。

 手を伸ばす。
 唇へ触れる。
 微かな吐息を確かめる。
 それでも気が済まずに、男は夜着のかかる胸元へ耳を寄せた。
 いのちの音が伝わってくる。
 柔らかな胸乳の向こうにそれを聞く。



 どうしてか。

 男は、急に泣きだしたい衝動に駆られた。
 幼いころにでさえ、何を求めたり悔やんだりして泣いた記憶など皆無だというのに。

 そう。
 だから、だろう。

 男は泣かない。

 代わりに
 夜着を剥ぎ、
 あたたかく真面な肌に手を添え、
 幼子が母親へとねだることを
 する。

 皮膚が薄く柔らかな肌へ鼻先をすりつけながら、ただの一箇所だけを、何度も何度も吸う。歯でかりかりと転がすものがみるみるうちに固くなる。やがては口の中がねばつき、長くはない爪が真面の肌へ食い込んで赤く痕を残す。


    「蝶」は、途中で何度か軽く身じろいだ。
    けれども目を覚ますことは無い。
    男の愛撫は淡々と、そして執拗に続く。
    今宵の唇はそれだけを求めた。







 おはようございます、と、見知らぬ少女が戸を開けて入ってきた。
 少女の手には膳があった。
 誰が自分へこれを寄越したのだろう。
 そう思って眺めているうちに、飯も汁もすっかり冷めてしまった。

 杏の菓子(くだもの)だけをふたつみっつ摘んで、また横になる。

 左の胸が微かに痛んだ。
 ああ、と声を洩らすと、痛みが弾けて記憶を呼び覚ます。

 こうした痛みは、たしか、産んだ赤子に乳をやっていた頃と同じもの。
 自らの赤子へ自らの乳を与える月日は短く、やがてすぐに乳母へ預けることになっていたことも、同時に思い出す。


 
 そして、

   俺は乳母の乳首を噛み切るから、乳母が幾人も変わった、と

 そう話した男がいたことを、ふと、思い出す。


 あれは、
 たしか、
 二人目の子へ乳をやっていた日のこと。

 男はこの左の胸を乱暴に掴んで、赤子の代わりに、溢れるものを飲んだ。赤子は側女へ預けさせて、戸を閉じ、この脚を開かせ、単衣も小袖も剥ぎ取りながらも、胸だけをせがんだ。そうするうちにこちらのほうが耐えきれずに、男へ、別なところをとせがんだ。


 あれは、
 誰だったか。

 わかるのに、わからない。

 「彼」は、
 「私」へ、
  世界を与える者。

 否。

「………私が、求めたもの……」


 杏の香りと甘さがしみた指を唇に添えて、呟く。
 そして思い出す。
 この胸から溢れたものを、彼は、甘すぎると言っていた。
 甘さが過ぎるものなど嫌いだろうに……と、そのとき思った。
 たしかに思った。




     憶えている。

     覚えている。





      だけど。







 世の闇と闇を隔てる戸を、すうっと開ける。
 音を立てぬよう、ゆっくりと。
 黒髪のたゆたう枕元へそっと忍び寄る。
 その耳へ気配など伝わらぬよう。



 夜の冷たさから細い体を守る夜着を、するりと剥ぐ。
 あたたかな胸に触れて、鼓動を確かめるために。

 今宵はもうそれだけにしようと、男は思っていた。

 だけど眠っているはずの腕が、急に、彼へ触れた。

 夢遊のうちのことではない。

 その証に、「蝶」はふうっと深く息を吐いた。




     だれ、と。

     男は問われた。


 一瞬、何を問われたのか、まるでわからなかった。

 気がつけば、衣を纏うままの細い脚を開かせていた。猛る情のまま、その奥を貫いた。迎えるための蜜などまだない「蝶」が哀しげに啼いた。それでも男は赦さず、赤い傷痕の走る腿に爪を立て、柔らかな胸乳を掴み、途切れ途切れの息を漏らす唇を塞いだ。
 哀しげな啼き声は、やがて鎮まる。
 繋がりあうそこには蜜が溢れ出した。
 透明な蜜と、白い蜜と。
 そして、紅い血と。





 

Posted by 藤原眞莉 at 03:43 | ツイッタ企画 | -

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