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RT企画6 「ともしび舞う夜に」
予約投稿しようかとも思ったんですが、ツイッタに更新お知らせが出ないかもなので普通にアップ。

保名と葛葉のおはなしです。

 ↓

 

 新月の夜の下、庭先で蛍が飛んでいる。
 かそけき光は儚げで、けれど美しい。
 風情に乏しい小さな庭だが季節の彩りは絶えず、なにより、冴える星の如くにきらきらしい妻が、赤子を抱いて隣りに座っている。ただそれだけでこの夜は、この世は清らに輝いている。
「きれいね」
「ああ」
 葛葉の言葉に、保名は短くうなずく。けれど視線が庭先ではなく自分に向いていることに気づくと、葛葉は淡く微笑んだ。そして、その唇で思いがけないことを言う。
「蛍はね、恋しい相手を求めて光るの」
「そうなのか?」
「ええ。でもこんな話もあるわ。蛍の光は、世に未練を残すひとの魂が変じたものだと」
「世に未練……か」
 死してなお現世に想いを残して、夏の夜にさまよい漂う。そう考えると、なにやら胸苦しい。歌心のある者ならば一句そらんじて心を託すのだろうが、あいにく保名は歌詠みの才はない。だからただため息をつく。すると、膝上にのせていた手に葛葉の手が重ねられた。
「ねえ、保名。ひとつ訊いてもいい?」
「ああ、なんだ?」
「もしも……私があなたより先に死んだら。そうしたら、あなたはどうする?」
「はあ?!?」
 保名は思わず声をあげる。静かに、と葛葉が口許に指を当ててくるが、騒がずにいられるような話題ではない。かといってすやすやと眠っている赤子を起こすのは忍びなく、保名は二度、三度と深く呼吸してから葛葉に向き直る。
「なぜ、そのようなことを訊く?」
「あなたといっしょに蛍を眺めてたら、なんとなく。だから、なんとなくでいいの。ねえ、どうする?」
「どう……する……」
 保名はしかめ面で考え込む。
 後朝(きぬぎぬ)の睦言のように、空想遊びのように、なんとなく考えようとする。
 もしも葛葉が、露のように儚く黄泉路に去ってしまったのなら。
 この手にふれるぬくもりが永遠に失われてしまうのなら。
 もう二度と、その笑顔を見られなくなってしまうのならば。
「えっ?!」
 驚きの声をあげたのは、葛葉だ。
 保名は薄衣(うすぎぬ)の袖で顔を隠し、ぼろぼろとこぼれる涙を懸命に隠す。大丈夫だ、とも、かまうな、とも言えない。口を開けばひどく情けない言葉しか紡げそうにない。だから無言を貫く。
 珍しくうろたえた葛葉は、腕に抱いていた赤子をかたわらの床にそっとおろすと、震えている保名を背中から抱きしめた。
「言葉遊びが過ぎたわ。ごめんなさい」
 ささやきかけてくる声に、保名は小さく首を振る。謝る必要はない。仕草でそう訴え、葛葉の手に自らの手を重ねる。と、泣き濡れた目のふちを舐められた。
「もう二度と、こんなことは訊かないわ。そして私は絶対、あなたより先に死んだりしない」
 あやすように触れてくる葛葉にどう答えていいのかわからず、保名は言葉ではなく口接けで応えた。

 新月の星明りの下、蛍はかそけき光を放ちながら舞う。
 いずれは必ず訪れる別れの日を示すように。
 それでもなお解き放たれぬ永き想いをあらわすかのように。


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新年明けまして最初のSSがこのテンションですみませんorz
しっとり系を目指したら、保名さん、この有様。。。
脳内BGMが、こっこさんの「遺書。」と、サンホラの「磔刑の聖女」だったのもいけなかった…orz
 

Posted by 藤原眞莉 at 05:28 | ツイッタ企画 | -

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