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RT企画5 「私と一緒に紅茶を」
RT企画、年をまたぎますごめんなさいorz

レヴィアンことレイモンド兄様と、ウィリアムのお話です。
第四部仕様(これ)なのでご注意を。

 ↓

 
大広間に入ると、客人は既にティータイムを満喫している。案内役の若い侍従が言葉もなく青ざめたが、ウィリアムは慌てず騒がす、すみやかに侍従を退室させた。
「やあ、ウィリアム。相変わらず眉間の皺が深いね」
「……誰のせいですか」
「少なくとも、私のせいではないだろうねえ」
飲み干したカップを円卓に置きながら、客人はからからと笑う。
身形こそ紳士のそれだが、癖のある黒髪に、黒の眼帯。見るからに胡散臭い風貌の男がなぜ王宮に、それも謁見の間ではなく私的(プライベート)な大広間に通されているのか。答えは、男の身分と肩書きにある。
クインシード王室、ケネス二世の第二王子にして、国教会の諜報員。暗号名(コードネーム)はレヴィアン。しかしウィリアムは兄としての名前で呼ぶ。
「今日は何の用ですか、レイモンド殿下」
「おや、よそよそしい。素直に『お兄ちゃま』と呼んでくれて構わないのに」
「幼児化する趣味はありませんし、あなたをそう呼ぶと口も喉も腐ってしまうので絶対に嫌です」
「あははは。相変わらず可愛げのないところがすこぶる可愛いねえ、ウィル。あ、ストロングティーを頼むよ」
ウィリアムの側近である長身の男に、レイモンドは飄々と命じる。
「はい、お任せを」
私用人から侍従長に格上げとなってなお陽気な男、ベルナルドは、にこやかに笑って応じる。
彼の淹れる紅茶は、いつもながら美味い。私用人の頃から主に歯に衣着せぬ物言いをする者だったが、主の客人にはいつも極上の一杯を提供する。美味いものも、翌朝には生死の淵を彷徨うものも、何でも、躊躇うことなく。それも主に対する忠誠の証だろう。
そんな男が、ウィリアムの側に仕えている。喜ばしきことだ。
しかしながらウィリアム王の眉間の皺が休まる時間は、なかなかない。
常ねらぬ混乱によって王位を継承した若き少年王に、世間は少しも待ってはくれない。時局はせわしなく移り行き、諸侯たちの動きはいかにも怪しげなものが多分にある。だからこそ、政務の合間を縫って諜報員との密談にも応じる。
だが、淹れたての紅茶を堪能するレイモンドには、緊張感のかけらもない。
「何か、報告があったのではないんですか?」
「報告? ないよ、そんなもの」
「はあ? ………まさか、紅茶を飲むためだけにわざわざ来たとでも?」
「その推察は、限りなく真実に近いなぁ」
「……………身分と肩書きを濫用しないでいただきたい」
ウィリアムは盛大にため息をつく。するとその眉間を目掛けて、手のひら程の大きさの箱が飛んできた。
投げたのは無論、レイモンドだ。
「今日の用件は、ただひとつ。おまえの息抜きだよ、ウィル。眉間もひどいが、クマもひどい。どうせ寝る間も削って政務に勤しんでいるんだろう? だがおまえはあまり身体が丈夫ではないし、後釜もまだ決まっていないんだ。もっと休みながら気張りなさい」
「……………」
「あと、その箱の中身はビスキュイだ。おまえの大好きなエヴァお手製のね」
「な……っ、それほど重要なものを投げて寄越さないで下さい!」
「大丈夫、それは毒味用だ。きちんとしたものは、こちらの分だ」
レイモンドはそう言って、侍従長に目配せする。事前に荷物を預かっていたらしく、彼はニコニコと笑ってラッピングされた箱を円卓に置いた。だが投げて寄越された箱にも、リボンがかけられている。ウィリアムは無言でしばし考えたあと、その箱をベルナルドに渡した。
「カレルベリー子爵令嬢に、毒味を命じる。お前から渡しておけ」
「わあ、私の婚約者に向かって相変わらず容赦ないですねえ」
そう答えながらも、ベルナルドは明るく笑っている。
その主従のやりとりを眺めるレイモンドは、また紅茶をひと口飲む。
「レオン兄上は、国外だ。頼れるお兄ちゃまはもはや私だけなのだから、ウィル、甘えたいときにはちゃんと甘えていいのだよ?」
「………利用したいときには、そうさせていただきます」
ウィリアムは深く息をつき、けれど口許は笑むように緩めながら、ようやく紅茶を口にした。

Posted by 藤原眞莉 at 20:15 | ツイッタ企画 | -

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