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RT企画3 「ふゆのつとめて」
晴明さんと梛子のおはなし。
陵王がまだいないころです。

 ↓

 

立春が来たれば即ち新年、季節がひとつ進む。
しかしながら朝の冷たさは変わらず、式神たちが炭櫃に火を入れさせながら、ふぁあ、と晴明と大きくあくびをした。部屋の中だというのに、吐息はまだ白く尾を引く。
二十日に一度、父親の保名を凝った趣向で起こす恒例行事は、昨日、一昨日と行ったばかり。たまには三日連続に挑むのも面白そうだが、そうなると説教が長くなりそうだ。それに今朝はあまりの寒さに二度寝をしてしまったから、ようやく起き出したいまは陽ものぼり、雪がちらちらと降っている。
今日も一日、寒そうだ。
そう思いながら身支度を整えると、あわただしい足音とともに濡れ縁から人影が飛び込んできた。
「ハル! ようやっと起きたぞなもし! なれば来よ、疾く来よ!!」
尼削ぎの黒髪を乱した梛子は、衵袿をまとう腕をブンブンと振る。何事なのかと晴明が振り返れば、また部屋から出て行く。御簾をくぐり、ひやりと冷たい濡れ縁に出てみれば、梛子は庭にいた。そして、一本の木の根元でぴょんぴょんとウサギのように跳ねている。
あれは、何の木だったか。
考えてみて、ああ、と納得する。
あれは梅だ。
朝の光の中、真白い花がふたつ、みっつと咲いている。
「むめ! むめ! 春告花(はるつげばな)のかほり、いとゆかし!」
晴明が木のそばまで歩いてきても、梛子はまだ飛び跳ねる。
全身で嬉しさをあらわすその身を抱え上げ、ほら、と花をつけた枝先のすぐそばに立つ。もともと大きな梛子の瞳が、いっそう大きく、そしてきらきらと輝く。これほどまでに喜ぶ者がいるのだから、今年もこの白梅は春を謳い、匂やかに咲き誇ることだろう。
そうしてふと、晴明は御空(みそら)からの花に気づく。
「梛子、ほら。唐梅だ」
「からむめ?」
不思議そうにまばたきながら、梛子は晴明の示す先を見やった。
東の空から射す陽光に、雪が金色に光っている。さながらそれは、風に舞う金色の花弁のようだ。
「唐梅(蝋梅)は、厳密には梅じゃない。でも、梅の季節に先駆けて咲く花、いわば梅告花だ」
「むめつげばな……」
梛子は袿の袖をそっと伸ばす。朝日に光る雪のひとひらが音もなく舞い降りる。と、その雪はたちまち金色に輝く一輪の梅の花に変じた。晴明も思わず驚いたが、さらに驚いたらしい梛子があわててその花を手に取ろうとしたが、花は風にふわりと舞い、跡形なく消えた。
雪の化生によるいたずらか、それとも、白梅の精のはからいか。
いずれにせよ、梛子はお気に召したらしい。
「ゆきからむめ、をかし!」
そう言って瞳をいっそうきらきらと輝かせる姿に、晴明も淡く微笑んだ。
 

Posted by 藤原眞莉 at 01:14 | ツイッタ企画 | -

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