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RT企画2 「ことうらあわせ」
保憲師匠と、まだ十代後半ごろのハルアキさんのお話です。

 ↓

 

「お師匠様」
「うん、なにかな?」
「ここに積まれた書簡をすべて書き写すのですか?」
「そうだよ。漢文だから読み下して、全十巻。期限は今夜の丑の刻。もし誤りがあれば、明日以降は三十巻やってもらうよ」
「………これも陰陽生の勉強のうちですか?」
「いや? 私からの個人的な課題だね」
「では学生の身として、異議申し立てます。どう見繕っても、あと半日で片付く量ではありません」
「片付かなかった場合には、和歌千首暗記の課題が待っているだけじゃないか。……ほら、喋っているあいだに少しは手を動かしなさい。時間(とき)は水のように砂のようにこぼれ落ちていくものだ」
「………わかりました」
不承不承、晴明は筆をとった。文机に山と積まれた書のひとつを広げ、漢文との格闘を始める。
その姿を見届けてから、保憲は満足げに微笑む。
「では、頑張りなさい。私は北の対屋にいる。恋しきひとの膝枕でゆっくり寛ぐから、邪魔をしないように」
「しませんよ」
憮然(むすり)とした声で返事する。
ほんの半月前、ものは試しにと保憲の寝所に巷で拾った付喪神を三体ほど送り込んだが、釜や傘、文箱の付喪神をのせた牛車の式神を安倍家の庭先に突っ込まれ、軒先が大破した。おかげで晴明は父親の保名からこんこんと叱られた。
「ただ、その漢文には『仕掛け』があってね。とある法則で文字を抜粋すると、強力な呪言となるものがいくつかある。それを探し出せれば、漢文の得意な式神を一体呼びだせる」
「え? 本当ですか?」
「もちろん」
蝙蝠扇を閉じながら、保憲はにこにこと笑う。俄然やる気の出てきた晴明は、漢文のひとつひとつを必死に読み解いていく。
その愛弟子に背を向け、濡れ縁に出ながら、保憲は唇だけでつぶやいた。
もちろん、そんなのは嘘だけどね、と。

Posted by 藤原眞莉 at 17:21 | ツイッタ企画 | -

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