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RT企画1 「星のみち」
テンとカイのお話です。
3RT分(140字×3)どころじゃねーぞ!という感じになりました。
ご笑覧いただければ幸いです。

 ↓

 

星明りの挿す褥で、うつらうつらと眠りに誘われる。
けれどその機を見計らったように、耳元で声がした。
「ねえ、カイさん。行きたいところがあるんだけど。というか、行きましょ?」
「行くって……どこに」
「筑前国。おとなりよ、おとなりさん」
ここ宇佐八幡宮は、豊前国。たしかに筑前は隣国、かの菅原道真公が終焉の地、大宰府もその筑前国にあり、宗像の三女神発祥の地でもある。
「なにか…祭りでもあるのか…?」
「ないわよ?」
傍らで腹這いになって頬杖をついたテンは、あっけらかんと言い切った。じゃあなんなのだ、とカイは疑問に思うが、それよりも眠気が勝る。油断するといまにも意識が途切れそうだ。
「わかった…起きたら、話、聞く……」
答えながら、カイはテンを両腕で引き寄せる。近頃はこうして眠るのが習慣だ。真夏はさすがに「暑い」と言われたが、立秋もすぎた今は互いの体温や肌、重みが恋しい。安心する。幸せな心地でまどろむ。
けれどテンは薄着の胸に身を寄せつつも、カイの頬を思いきりつねりあげた。
「じゃあ子守唄がてらに話すから、寝ながら聞いて? あのね、筑前国にも八幡宮がいくつかあるの。一番有名なのは、箱崎八幡宮ね。唐土(もろこし)から攻めてきた水軍を沈める神風を起こしたとされてる八幡宮。でもあたしが行きたいのは別のところ。宇美八幡宮よ。ここは名前のとおり『うみ』の社よ。カイさんも漢字だと『海』で音が同じだし、なかなか縁起がいいでしょ? そういうわけで、産まれるまではその宇美八幡宮のお世話になるから、そのつもりで旅支度してちょうだいね」
「………………待て。ちょっと、待て」
眠気に負けて本当に寝てしまいそうだったが、カイはこらえた。
どうにも聞き捨てならない言葉を聞いた。ゆえに身を起こし、テンに向かって正座した。
「いま、なにか、ものすごいことをさらりと言わなかったか?」
「えー? そう? 気のせいじゃない?」
「いや違う絶対に違う。……だったら訊くが、筑前に行きたい理由、もう一回言ってくれ」
「博多でうどん食べたい」
「言ってないだろ、そんなことは一言も!!!!!」
「じゃあ、どこを聞いて目が覚めたの?」
テンはわざとらしく拗ねたような口ぶりで訊いてくる。カイは思いきり返事に詰まった。正座したままうなだれたが、よくよく見てみれば、いつの間にかテンも褥の上で正座して向かい合っている。その姿を上から下までじっと眺めた後、あらためてカイはうなだれた。
しかし、ここでもたついてもどうにもならない。
意を決してカイは問う。
「その…………生まれるのか?」
「なにが?」
「なにがって、そ、その…………子供が」
「どこの子供が生まれるの?」
「だから、それは! おまえが、…………………う、うううう産むんだろ?」
「そうよ。あたしとカイさんの合体作」
「生々しく表現するな!!!」
「じゃあフツーに。……あたしとカイの愛の結晶が、ついに宿ったのよ」
うふ、とテンはにこやかに微笑む。その姿を再度、上から下まで眺める。何度も眺め、そうして、カイはテンの膝上に顔を突っ伏した。その頭をわしゃわしゃと撫でられる。
「どう? びっくりした? びっくりした??」
「……びっくりしすぎて、一瞬、三途の川が見えた……」
「あら駄目よ、まだ死なないで? ねえ、お父様?」
言いながら、テンはカイの手を取り、自らの腹にあてがう。触れてじわりと伝わるぬくもりは、いつもと変わらない。そのはずだというのに不思議とあたたかい。手を伸ばせば確かにそばにいる、その実感に、目頭まで熱くなる。それを伝えるようにカイはテンの手を握り返し、身を起こす。そして、星明りに照らされた容貌(かんばせ)をじっと見つめる。
「ありがとう」
「あたしこそ、ありがとう」
「……これからは、こうやって、生きていくんだな」
かの父祖から授かり、幾人もの母たちが連綿と受け継いできたその命が、他でもないこの女人――――何百年もの歳月を見送ってきた星神からひとりの女となったテンが、さらにつなぐ。それをともに育める。人の世であれば至極当然なことゆえに、神仏に連なる身には縁遠く、血の未来よりも星神との永遠を望み欲した。
けれどいまはこうして、この身も魂魄(たましい)も、人の世で、ともに在る。
尽きぬ泉のように湧き出でる穏やかであたたかな心地に、カイはテンを両腕で抱きしめた。
そして、冷や汗をかくほどに気になって仕方ない疑問をぶつける。
「み…………、身籠ったって、いつ、わかったんだ?」
「え? 十日ぐらい前よ。月のものがふた月も来てないし、八茅尼(やちに)にも確認して、それで宇美八幡宮にも神使(しんし)を出してもらったし」
「はあぁ!?! じゃあ、おまえ、なんで、それを黙っ……」
「だって今夜は、カイさんの接吻(キス)がいつもより気持ちよかったんだもの」
テンはカイの首に細腕を絡ませ、体をすり寄せる。交わした熱の名残りを煽るように甘い声で囁かれ、カイは一気に血がのぼる。顔から発火、もしくは爆発するのではないかと思った。それをあやすように頭をなでてくるテンに歯噛みするが、怒りなどあるはずもない。ただ驚き、ただただ、幸福だ。
「宇美八幡から宇佐に戻るときは、三人、なのか」
「そうね。でもいっそのこと、もっと増やしてからでもいいんじゃない?」
「……そうだな」
うなずいて、カイはも一度テンを抱きしめる。求めるまま求められるまま、口接けを交わした。
不確かだからこそ無限の未来はこれからも、こうして分け合っていく。
ふたりと、そこから繋がる命たちとともに。

 
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当初の予想よりも長い&糖度高めになりました。
テンとカイさん、そんなにもいちゃつきたかったの? そうなの??

あと、思いきり自分の地元の話題に走りました……すみません。。。
宇美八幡宮は、いまもお世話になっています(甥っ子、姪っ子の健康祈願とか)
社格は宇佐神宮(総本山!)にかなうはずもありませんが、長く地元に根付いている八幡宮です。
 

Posted by 藤原眞莉 at 01:35 | ツイッタ企画 | -

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